いつも帰り道に見ていたまちくさが、消えた。正確に言えばそれは取り壊された。そのまちくさは「みどりのそら」と名付けたまちくさだった。家の壁全体に垂れ下がった蔓の滝が夏には鮮やかな緑を、冬には肌のような枯れ葉色を魅せてくれ、それは季節の変化を何の飾り気もなくふと漂わせてくれるものだった。
僕は改めて思う。まちくさは人の手によって生まれ、人の手によって消えていくのだということを。でも、この町があって、そこに人が存在する限りまた新たな”まちくさ”が生まれていくのも事実。「みどりのそら」はなくなったけど、その場所にはまた新たな町の形が生まれ、まちくさが戻ってきてくれる。そう思えば楽しい。